★ 後藤美和子『評伝 ジャック・ヴァシェ』水声社、2022年
実証的な研究の成果をもとにジャック・ヴァシェを再発見することのできる良書。若きアンドレ・ブルトンに決定的な影響を与えたジャック・ヴァシェの生涯を様々な記録や証言、書簡や草稿を元に辿っている。「ジャック・ヴァシェとは何者だったのか?」という謎に真摯に向き合い、解明しようとしている。
★ グレゴワール・シャマユー『人間狩りーー狩猟権力の歴史と哲学』平田周・吉澤英樹・中山俊訳、明石書房、2021年
「フーコーの再来」といわれたフランスの哲学者グレゴワール・シャマユーの著作の邦訳。貧民、外国人、ユダヤ人、先住民、黒人、不法者など、現実に行われた人間狩りの様子を描いた映画や文芸作品などを引用しながら、狩る者と狩られる者とが姿を変え、入れ替わり、共食いするさまを分析した書物。
★巖谷國士監修・著『マン・レイと女性たち』、平凡社、2021年
絵画、写真、オブジェ、彫刻、映画、文学まで活動領域をひろげて活躍したマン・レイを「女性たち」という新しい視点から論じた著作。Bunkamuraの展覧会(2021年7月3日〜9月6日)に際してカタログとして出版された。
マン・レイが女性と対等に接していたこと、相手の個性を重んじて写真に撮ったり絵に描いたことは彼の作品をよく見ればわかる。巻末の詳細な「MAN RAY WHO'S WHO 人名解説と索引」は圧巻。マン・レイの生涯に関わった女性たちの生き方に重点をおきながら解説がなされている。序文、本文ではマン・レイがどういう人間なのかがわかりやすく説明されており、優れた「マン・レイ入門書」にもなっている。
★永井敦子・畑亜弥子・吉澤英樹編『アンドレ・マルローと現代ーーポストヒューマニズム時代の〈希望〉の再生』、上智大学出版、2021年
1996年にマルローの遺骸がパンテオンに埋葬されてから四半世紀。
「フランスの偉人」としてのこのマルローの聖別は同時に、彼が生きてきた歴史的現実から、彼を決定的に遠ざけてしまったようである。
マルロー生誕120周年のいま、日本とも関係の深かったマルローに再び焦点を当て、その人生と著作の今日的意義を検証する。
20世紀フランスの代表的作家のひとりであり、政治家としても知られるアンドレ・マルロー(1901-1977)。小説から映画製作、芸術論に至るまで、ジャンルを超えた幅広い創作活動を行ったが、その20世紀の象徴ともいえるマルローの著作と活動は、継続的な研究議論の場を持たぬまま今日に至っている。
本書では、日本とフランスの幅広い世代の研究者が、それぞれの専門領域からマルローの著作等を分析・再考し、新しいマルロー像の構築に挑む。
(amazonより)
★ジャン・レー/ジョン・フランダース『マルペルチュイ』岩本和子・井内千紗・白田由樹・原野葉子・松原冬二訳、国書刊行会、2021年
《ベルギー幻想派の最高峰》
ジャン・レー/ジョン・フランダースの決定版作品集!
現代ゴシック・ファンタジーの最高傑作『マルペルチュイ』待望の新訳に加えて、ほとんどの収録作が初訳となる、幻の本邦初紹介短篇集2冊、枠物語的怪奇譚集『恐怖の輪』とJ・フランダース名義の幻想SF小説集『四次元』を収録。
飽くなき生への歓喜と病的でグロテスクな想像力を混淆させ、幻怪で濃密な文体によって独自の世界を創造した、作者絶頂期の精華を集大成。
(国書刊行会HPより)
★ 井岡詩子『ジョルジュ・バタイユにおける芸術と「幼年期」』月曜社、2020年
動物や世界から切り離された人間はいかにして個としてその生を全うするか。バタイユの絵画論と文学論に共通する地平を「幼年期」への志向に見いだす、新鋭による果敢な読解。【シリーズ・古典転生、第22回配本、本巻21】
本文より:「エロティスムに捧げられた文学とイメージ(とりわけ絵画)は、ともに意識や理性のはたらきから有用性を奪う、すなわち遊戯化するものである。また、エロティスムはそれ自体「幼年期」の領域に属し、芸術や芸術家たちと至高性を分かち合う。〔…〕「幼年期」の本質は、つぎのようにまとめることができるだろう。/一、「おとな」の世界を前提とする。/一、反抗や破壊を第一義とし、それをとりわけ意識の上でおこなう。/一、マイナーな立場を固持する。/一、近現代的な至高性の場である」。
(月曜社HPより)
★京谷裕彰編『薔薇色のアパリシオン 富士原清一詩文集成』共和国、2019年
日本のシュルレアリスム運動に参加した詩人富士原清一の(ほぼ)全作品を収めた書物。詳細な年譜と瀧口修造、高橋新吉による追悼文が付されている。一冊の詩集を刊行しないまま、太平洋戦争に徴収されて36歳の若さで亡くなったシュルレアリストの再評価をわたしたちに呼びかける。
【版元より】
1920年代に詩誌『薔薇・魔術・学説』『衣裳の太陽』などで颯爽とデビューしながら、敗戦直前にわずか36歳で戦没した詩人、冨士原清一(1908-44)。そのほとんどすべての文業を収めた実質的な1巻本全集です。
瀧口修造や北園克衛、山中散生らと活動をともにした日本のシュルレアリスム運動のキーパースンでありながら、そのあまりにも早い死のために顧みられることのなかったこの詩人についての再評価を期して、本書を送り出すことにしました。ロートレアモン、コクトー、ツァラの「dada宣言」をいちはやく翻訳し、スーポー、アラゴン、エリュアールを紹介するなど、訳者/編集者としての視点にも注目されます。
黎明期のモダニズムが凝縮したこの1冊、600部限定ですのでお早めにお求めください。
(版元ドットコムより)
★Michael Richardson, Dawn Ades, Krzysztof Fijalkowski, Steven Harris, Georges Sebbag, The International Encyclopedia of Surrealism, Bloomsbury Visual, 2019.
Surrealism is one of the most influential and popular art forms of the last century. It has shaped painting, literature, film, photography, music, theatre,
architecture, fashion and design, as well as thinking about politics and culture. The Encyclopedia presents the first comprehensive and systematic overview of surrealism internationally,
from its beginnings to the present day.
Volume 1 includes overviews of national surrealist movements, surrealism's influence across the visual, applied and performing arts, and analyses of the concepts which underpin surrealism.
Volumes 2 and 3 present an A-Z of both the significant and the lesser-known individuals - theorists, critics, novelists, poets, playwrights, screenwriters, designers, painters, collagists, object
makers, sculptors, film makers, and photographers – who have made and continue to make surrealism. The volume concludes with a detailed overview of contemporary surrealist practice.
(HPより)
★松原冬二『アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグ イタリアをめぐる幻想の美学』水声社、2019年
フランスの作家でありながら、ヴェネツィアとパリを往復する生活を送り、『大理石』『海百合』といったイタリアを舞台にした長編小説を書いたマンディアルグ。「わが故郷」と呼ぶほどイタリアに魅了・触発され、いかにしてその「異端」の幻想美学を作り上げたのか?
谷崎潤一郎と三島由紀夫を愛する、孤高の耽美作家マンディアルグの本邦初のモノグラフィー!(水声社HPより)
★ 柳沢史明・吉澤英樹・江島泰子編著『混沌の共和国ーー「文明化の使命」の時代における渡世ディスクール』ナカニシ出版、2019年
フランス革命が生み出した「人間と市民の権利の宣言」は現在の第五共和政までを拘束する一つの原理である。その共和主義の理想を追い求めた第三共和政時代は混沌とした時代だった。原理というものを実践し生きることは容易いことではない。いやそもそもそのようなことは可能なのか。本書におけるさまざまな「渡世のディスクール」は、このような疑念をどこかで感じながらも一つの理想に向き合った時代の人びとが現代に問いかける声となるはずである。
(ナカニシヤ出版のHPより)
★ 『図書新聞』2019年1月12日(第3382号)
合田陽祐さんが「フェミニズム批評のどこが問題なのか――批評家と教育者のあいだを往還するクラウス」を書いていらっしゃいます。現代アメリカを代表する美術批評家ロザリンド・クラウスの訳書『独身者たち』井上康彦訳、平凡社、2018年の書評です。
★ 『図書新聞』2018年12月22日(3380号)
塚原史先生が「18年下半期講読書アンケート」にて、デレク・セイヤー『プラハ、二〇世紀の首都ーーあるシュルレアリスム的な歴史』(阿部賢一、河上春香、宮崎敦史訳、白水社)、長谷川晶子『フルーリ・ジョゼフ・クレパンーー日常の魔術』(水声社)、平芳幸治『マルセル・デュシャンとは何か』(河出書房新社)を取りあげています。
★ 鈴木雅雄『ジゼル・プラシノス ファム=アンファンの逆説』水声社、2018年
少女は大人を追い抜いて、文学と絵画を去勢する。
14歳にして完璧な自動記述を披露した天才少女、ジゼル・プラシノス。鮮烈なデビューをよそに黙りこんだかのようにみえた彼女は、次第に奇妙な小説を、そして壁掛けの制作を通じて特異なイメージを産出した。子ども/大人の狭間で、また兄マリオとの複雑な関係のなかで、遅れてやってきたシュルレアリスムと出会いなおす、逆説的な生を追う! (水声社HPより)
★ 長谷川晶子『フルーリ・ジョゼフ・クレパン 日常の魔術』水声社、2018年
無心の絵筆の先から光り輝く寺院が現れる
「300枚の絵を描けば戦争は終わる」――突然聞こえた〈声〉にしたがって描きはじめると、300枚目を描き終えた翌日にナチス・ドイツが降伏……デュビュッフェに見出され、ブルトンに称賛された霊媒画家の謎めいた生涯と魔術的な作品を解明する。
(水声社のHPより)
★坂巻康司編『象徴主義と〈風景〉』水声社、2018年
19世紀の文学運動のなかでつねに特権的な主題であった〈風景〉。
ロマン主義や自然主義とは異なる〈風景〉を捉えた象徴主義の作家たちに焦点を当て、ボードレール以後の作家たちがいかに〈風景〉と対峙したのか、その意味を剔抉する。(帯文より)
合田陽祐さんがジャリ論を寄せてらっしゃいます。
★ 木水千里『マン・レイ 軽さの方程式』三元社、2018年
マン・レイ(1890-1976)はダダイスム、シュルレアリスムなど20世紀の華々しい芸術運動の一員として理解されてきた。だが、絵画、写真、オブジェ、映画など、媒体にしばられることなく機智と謎に満ちた創作を続けた彼の思想は、そうした時流を超えたものだった。芸術には進歩がなく、それゆえ自身の作品は永続すると断言するマン・レイ。現代美術の問題を先鋭的に体現する芸術家マン・レイを再定義する。
(三元社HPより)
★ 平芳幸浩『マルセル・デュシャンとは何か』、河出書房新社、2018年
二十世紀芸術に決定的な影響を与えたマルセル・デュシャン(という事象)の謎を解明する入門書。非常に頭がよく難解な作品をつくったとされるマルセル・デュシャンというひと、作品、事件を時間軸に沿いながら、わかりやすいことばで説明してくれる。最新の情報も含まれているため、デュシャンに興味のあるひとは必読の書。
★ デレク・セイヤー『プラハ、二〇世紀の首都』阿部賢一・河上春香・宮崎敦史訳、白水社、2018年
ベンヤミンはかつてパリを「19世紀の首都」と名づけ、モダニズムの前史を見いだそうとした。本書はその精神を引き継ぎ、プラハを「20世紀の首都」と位置づけ、ポストモダンの目覚めをそこに読み解く。
20世紀を通じ、プラハは世界でも他に例を見ないほど、「超現実的」なまでにさまざまな政治的・地理的変動を経験した。文化的には、パリに次ぐシュルレアリスム第2の中心として、「モダニストたちの夢がある時代を謳歌し、そしてふたたび破綻していった場所」であったが、カフカ『訴訟』や『城』、ハシェク『善良なる兵士シュヴェイクの冒険』、フラバル『あまりにも騒がしい孤独』、クンデラ『可笑しい愛』といったアイロニーや不条理に満ちた世界文学を代表する傑作が生まれ、さまざまな芸術潮流が交錯する場でもあった。
詩や小説の抜粋、回想録、書簡、論考、インタビューなどをコラージュのように随所に織り込む巧みな語りによって、中欧の都に花開いた文学、美術、音楽、写真、演劇、建築、デザインにいたるまで、多岐にわたるジャンルを軽やかに横断する。従来のプラハ論とは一線を画す、刺激的かつ画期的論考! 図版多数。(白水社HPからの抜粋)
★ 齊藤哲也『ジャン=クロード・シルベルマン』、水声社、2018
シルベルマンはアンドレ・ブルトンの絵画論の集大成『シュルレアリスムと絵画』でも取り上げられている画家である。本書は、ブルトンと行動を共にした最後のシュルレアリストであるシルベルマンに注目しながら、戦後のシュルレアリスム運動の軌跡やグループのあり方を明らかにしようとしている。「あとがき」では、シルベルマン本人への直撃インタヴューの模様も報告されている。
★ 阿部賢一『カレル・タイゲ ポエジーの探求者』、水声社、2018
《シュルレアリスムの25時》第2期は阿部先生のタイゲ論と國分先生のファルドゥーリス=ラグランジュ論からはじまる。タイゲはチェコの前衛芸術を牽引、雑誌を創刊し、コラージュを残した。このチェコ・シュルレアリスム運動の最重要人物の理論家としての活動を明らかにする。
★ 國分俊宏『ミシェル・ファルドゥーリス=ラグランジュ 神話の声、非人称の声』、水声社、2018
バタイユやレリスの激賞を受け、シュルレアリスム・グループの傍らで秘教的な言語世界を構築した、カイロ生まれのギリシア人、ミシェル・ファルドゥーリス=ラグランジュ。事物の根源をまなざす難解きわまりない詩的散文をつぶさに辿り、人称という装置に収まりきらない詩人の「声」に耳を傾ける。(水声社HPからの引用)
★ 塚本昌則・鈴木雅雄編『声と文学 拡張する身体の誘惑』平凡社、2017年
「『〈前衛〉とは何か?〈後衛〉とは何か?』『写真と文学』に続く、文学史・文学概念の脱構築を試みる共同研究の第3弾。完結篇。今回のテーマは声=音。録音技術と文学の関係までをも問う反文学論集。詳細年譜「音響技術と文学」を付す」(平凡社HPからの引用)
★ 『ダダ・シュルレアリスム新訳詩集』塚原史・後藤美和子訳、思潮社、2016年
アポリネール、ピカビアから、ツァラ、ブルトンを経て、エメ・セゼール、アニー・ル・ブランに至るまでの32人の詩的冒険を翻訳したアンソロジー。日本で未紹介のものや近年になって発見された作品も取り上げている。
★ 『ユリイカ』特集「草間彌生」、2017年3月号
草間彌生の初期の小説に関する合田陽祐の精巧な論考「離人症と宇宙劇」が掲載されている。
★ 『現代詩手帖』特集「ダダ・シュルレアリスムの可能性」2017年3月
塚原史+朝吹亮二の対談や、巖谷國士+星埜守之+後藤美和子の鼎談をはじめ、ブルトン(前之園望訳)やアニー・ルブラン(塚原史訳)の翻訳、刺激的な論考の掲載された特集。
★ 『ユリイカ』「ソーシャルゲームの現在」2017年2月号
唄邦弘「日常のなかのゲーム/ゲームのなかの日常」や中田健太郎「逆説的な社会性 『パズドラ』雑感」など、読み応えのある論考が掲載されている。
★ アニー・ル・ブラン『換気口』前之園望訳、エディション・イレーヌ、2016年
20歳でアンドレ・ブルトンと出会い、運動に加わったアニー・ル・ブランの代表作の翻訳。ル・ブランは、この本を通じて「風をおこそうと努めながら、文字通りの詩そのものというより、はその起源たる、そして時に景色全体を燃え立たせようとすることに成功する、抒情的反乱に賭け」ている。彼女の詩的ニュアンスに満ちたテクストを見事な日本語に翻訳している。
★ 『三田文学』2016年秋季・特大号(127号)
車谷長吉の特集号だが、シュルレアリスムに関連した論考が収録されている(鈴木雅雄「手紙の時間がはじまる」、有馬麻理亜「第二次世界大戦後の一挿話『世界合衆国』」、浅利誠「本居宣長、西田幾太郎、出口なおの日本語」)
★ ジョルジュ・セバック『崇高点 ブルトン、ランボー、カプラン』鈴木雅雄訳、水声社、2016年
フランスのシュルレアリスム研究のなかでも独自のポジションにいつづけるジョルジュ・セバックの作品のはじめての翻訳。手紙やメモなど公刊されなかった文字情報と作品の関係を丁寧に分析し、解読していくセバック氏の後を追って、読者は新しいシュルレアリスムのヴィジョンを見いだすだろう。最後には鈴木雅雄氏によるインタヴューがついており、セバック氏の独自の発想がどのような経歴のなかで生まれたのかが理解できるようになっている。
★ 平芳幸浩『マルセル・デュシャンとアメリカ: 戦後アメリカ美術の進展とデュシャン受容の変遷』 ナカニシヤ出版、2016年
戦後のアメリカのアーティストたちがデュシャンの絵画やレディー・メイドをどのように受容してデュシャン像を練り上げたのか、またデュシャンがそれにどのような対応したのか、を丁寧に真摯に追った書物。
★ 『ユリイカ』8月臨時増刊号「ダダ・シュルレアリスムの21世紀」
巖谷國士先生と塚原史先生の編集協力による充実した特集。ダダ100周年、ブルトン生誕120年/没後50年を記念して組まれた。
鈴木雅雄先生、星埜守之先生、四方田犬彦先生、永井敦子先生、北山研二先生、朝吹亮二先生、齊藤哲也先生をはじめとした、大御所と若手30名の論考と、岡上淑子さん、上野紀子さん、岡崎和郎さんの作品から構成されている。
★ 『図書新聞』(2016年6月4日)
ダダ誕生100年、ブルトン死後50年を記念して、巖谷國士先生と塚原史先生の対談が行われた。ふたりのダダ、シュルレアリスムとの出会いから、最近の受容にまでいたる、充実した内容となっている。第一面から第三面にわたって掲載されている。
★ ディディエ・オッタンジェ編『シュルレアリスム辞典』柏木博監修・遠藤ゆかり訳、創元社、2016年
2013年にポンピドゥー・センターで行われた展覧会「シュルレアリスムとオブジェ」展カタログの翻訳。オブジェに関する事典、歴代の展覧会(33年のシュルレアリスム展から65年の絶対的隔離展まで)の解説、名文集など、遊び心満載の、充実した本。
★ APIED, vol. 26, 2016文芸誌〈アピエ〉最新号のテーマは「日本のシュルレアリスム《日本文学篇》」。
もともとは「シュールな日本文学」というテーマで企画されたようで、西脇順三郎や瀧口修造は扱われていない。夢野久作、日影丈吉、内田百閒、稲垣足穂、安部公房などの大作家から佐川ちかまで紹介されている。
★ クリストフ・グリューネンベルク、ダレン・ファイ編著『マグリット事典』野崎武夫訳、創元社、2015年
2011年から12年にかけてテート・リバプールとアルベルティーナ美術館で開催された展覧会に際して刊行されたテクストの翻訳。ルネ・マグリットの作品の世界観を明らかにする。
★ 巖谷國士『旅と芸術』平凡社、2015年
シュルレアリスム研究の第一人者巖谷國士が「旅」の表象の歴史をたどっている。古代から現代までという大きなスケールで物事をとらえているが、選ばれた作品(油絵、銅版画、写真、絵本など)はひとつひとつものすごく可愛らしいものばかりだ。デルヴォーやヴァランティーヌ・ユーゴー、キリコ、エルンスト、カリントンなどの作品も紹介されている。
★ 吉澤英樹編『ブラック・モダニズム 間大陸的黒人表象におけるモダニティの生成と歴史化をめぐって』未知谷、2015年
第一次世界大戦前(レイモン・ルーセル)、両大戦間、その後、と大きく三つの区分に分かれて、文学と美術における黒人表象がどのように生成し、どのように歴史化されたのか、その過程の重要なポイントが理解できるようになっている。それぞれの論考の題名はhttp://www.michitani.com/books/ISBN978-4-89642-482-9.html
で紹介されている。
★ ロジャー・シャタック『祝宴の時代:ベル・エポックと「アヴァンギャルド」の誕生』白水社、2015年
半世紀以上前に刊行された名著の翻訳。ベル・エポックに活躍したアンリ・ルソー、エリック・サティ、アルフレッド・ジャリ、ギヨーム・アポリネールを扱い、彼らがいかにしてアヴァンギャルドを準備したかを示唆している。
★ 谷口文和・中川克志・福田裕大『音響メディア史』、ナカニシヤ出版、2015年
レコードやラジオ、電話などの音響メディアの技術と文化の発展を、時代や社会との関係から、非常にわかりやすく論じている。第三章では、ブルトンの敬愛したシャルル・クロが取り上げられていて、科学者としての彼の活躍を知ることができる。
★ ジャクリーヌ・シェニウー=ジャンドロン『シュルレアリスム、あるいは作動するエニグマ』齊藤哲也他訳、水声社、2015年
シュルレアリスム研究第一人者シェニウー=ジャンドロン氏が1980年代から2000年終わりまでに発表した論文のなかから、6人の日本の研究者が特に重要だと思われるものを選びだし、訳出し、年代順に編んだ論文集。シ歴史、雑誌、言語活動、性差、文化人類学などのテーマからシュルレアリスムが扱われている。
★ Catalogue de l’exposition André Breton la maison de verre, Cahors, du 20 septembre
2014 au 1er février 2015.
★ Gavin Parkinson, Futures of Surrealism: Myth, Science Fiction, and Fantastic Art in France,1936–1969, Yale University Press, 2015. http://amzn.com/0300209711
英語で書かれた本にしては珍しく1950年代、60年代のシュルレアリスムの活動を扱っている。とくに、シュルレアリスムにおけるSFの受容やファンタスティック・アートとの関係を論じている。
★ ハンス・プリンツホルン『精神病者はなにを創造したのか 』、林晶他訳、ミネルヴァ書房、2014
1922年にドイツの精神科医プリンツホルンが150余枚に及ぶ図版とともに精神病患者の創作物を紹介した記念碑的な著作。マックス・エルンストがドイツから持ってきてブルトンらに紹介したと言われている。多くのシュルレアリストに衝撃を与えた。
★ ジョルジュ・ディディ=ユーベルマン『ヒステリーの発明――
シャルコーとサルペトリエール写真図像集(上)、(下) (始まりの本)』、谷川多佳子・和田ゆりえ訳、みすず書房、2014年。